J. of Taroten

中村 靖 著：WOODAP 上下水道の未来への処方箋, 2020, 幻冬舎, 1500円(C6面: 書評, 2022.4.26)

メタウォーターの社長(当時)の著書です

　この本は，水道における官民連携が進むなか，民の立場での水道の担い手が，多分，社員研修向けに発売した本が，一般人も購入できる書籍となっている記述スタイルの本です。「水道に群がるハゲタカ民間企業」といった言われ方をしては，社員も誇りをもって仕事ができない。水道界(公営企業)は人口減少のなかで料金収入が減って困っている から，民間が助けてあげるんだよ(ハゲタカ呼ばわりされたら心外だよ)，という内容の本です。

PDCAならぬWOODAPでいこう

　組織的マネジメントでは，PDCA (Plan, Do, Check, Act)が有名だ。本書では，災害の多い日本の水道では，PDCAでは間に合わないから，OODA (Observe, Orient, Decide, Act)でいくそうです(観察し，Orientし，決定し，行動する)。Orientは オリエンテーリング(方向を決めて走る)と同じ意味です。すると，WOODAPのWとPは何なんだということになり，これが本書を読んでもなかなか見つからないが，W は Water and Wisdom，P は Preparation のようです。

教育改善でもOODAの方が実際的

　教育改善においても，PDCA (Plan, Do, Check, Act)が強調され，本学の教学マネジメントの中枢にいることも多いたろてんとしては，こういう管理が本質ではないと思いつつも，そういうことにお付き合いもしてきたし，積極的に旗振りもしてきました。ただ，教育においても，PDCAというよりは，OODA (Observe, Orient, Decide, Act)の方が実質的のように感じます。

セラミック膜関係の事例もあり

　メタウォーターは 富士電機 と日本ガイシが後ろ盾なので，日本ガイシのセラミック膜を用いた水処理事例が本書でも多く紹介されています。たとえば，横浜市川井浄水場，大牟田・荒尾ありあけ浄水場，会津若松滝沢浄水場，など有名な事例が収載されています。DBO, PFI, コンセッション，などについての説明 もあるので，水道の官民連携についての一通りの内容を学ぶことができます。

右の写真：川井浄水場のセラミック膜