J. of Taroten

英国や米国で下水からポリオウイルスが検出 (C2面：環境衛生工学，2022.8.23)

いまポリオの下水疫学が話題です

　2022年6月に英国で，さらに，2022年8月に米国で，下水中からポリオウイルス(急性灰白髄炎，かつて小児麻痺と呼ばれた疾病の原因ウイルス)が検出され，緊急の予防接種が呼びかけられている国があり，話題となっている。もともと，同ウイルスは生ワクチンの接種によって，弱毒ワクチン株が下水中から検出されるが，今回の検出はワクチン株が野生株に復帰したものとして警戒されているようだ。日本ではポリオの発生は1980年が最後であり，2012年に小児のポリオ予防接種が経口生ワクチンから不活化ワクチンへと切り替わったため，国内下水からのポリオウイルスの検出は，生ワクチン接種者の海外からの入国など限定した状況のみに由来する(はず)。

ポリオはもともと下水疫学が適用されてきた

　下水疫学が新型コロナウイルス感染症の関連で注目されているが，ポリオウイルスに対する下水疫学は新型コロナ以前より，世界各国で実用化され，下水や環境水による監視が我が国を含めてルーチン業務として実施されている。感染しても無症状の人が多いなど，新型コロナウイルスとポリオウイルスには共通して下水疫学に意義を見いだしやすい性質があるが，感染者のウイルスの排出量などの観点で，ポリオウイルスの方が新型コロナウイルスよりも下水モニタリングが簡単であるようだ。

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